■親が認知症になったらどうする?

「親の介護費用は、親の預金から出せばいい」

認知症になって「意思能力がない」と判断されると、資産が凍結され、家族であっても手出しができなくなるというのが現実です。

■なぜ凍結されるのか?

契約や取引には本人の「意思能力」が必要であり、認知症によりこれが失われると、すべての法律行為が無効になってしまいます。

金融機関はトラブル防止のため、名義人の認知症を把握した時点で口座を凍結せざるを得ません。

■資産凍結によって引き起こされる「3つの悲劇」

預金が引き出せない(生活費・介護費の枯渇)

・親の介護施設入居費用などを、子どもが立て替えざるを得なくなる経済的負担。

② 不動産の売却・修繕ができない(実家の空き家問題・賃貸経営の行き詰まり)

・介護費用捻出のために実家を売りたくても売れない。

・大家さんの場合、アパートの大規模修繕や新たな賃貸借契約ができなくなるリスク。

生前の相続対策がストップする(税務上の不利益)

・計画していた生前贈与や、生命保険の活用、アパート建築などの節税対策が一切実行できなくなる。

■認知症になった事実を金融機関はどうやって把握するのか?

①最も多いと言われているのが家族からの相談

家族がよかれと思って銀行に相談したことで、結果的に口座に制限がかかってしまうという、最も典型的で皮肉なパターンです。

・「親が認知症になり施設に入るので、代わりに定期預金を解約したい」

・「親が暗証番号を忘れてしまったので、代わりに手続きをしたい」

このような相談を窓口で受けた時点で、銀行側は「名義人本人には意思能力がない」と判断せざるを得ず、規定に則って口座の取引制限(事実上の凍結)を行うことになります。

②窓口における本人の不自然な言動

本人が1人で銀行を訪れた際の様子やトラブルから、行員が異変に気づくケースです。

・短期間に何度も「通帳やキャッシュカードをなくした」と再発行の手続きに訪れる。

・行員が「今日はどのようなご用件ですか?」「いくら引き出しますか?」と尋ねても、つじつまの合う返答ができない。

・自分の名前や住所が書けない、これまで使っていた印鑑がどれかわからなくなっている。

銀行には「顧客の財産を保護する義務」があるため、窓口でのやり取りを通じて「契約の趣旨を理解できていない(意思能力がない)」と判断した場合、現金の引き出しや金融商品の売却などをストップします。

③異常な取引(システム検知)

口座の動きから銀行側が不審に思い、本人確認を行った結果として認知症が発覚するケースです。

・これまで全くなかったような高額の現金引き出しが連続している。

・不自然な口座への送金が行われている。

特殊詐欺(振り込め詐欺など)を防ぐためのモニタリングシステムに引っかかり、行員が電話確認や窓口でのヒアリングを行った際、本人の認知機能の低下が判明することがあります。

■事前の対策

① 家族信託:信頼できる家族に財産の管理・処分権限を託す方法。柔軟な財産管理や不動産の売却が可能です。

② 任意後見契約: 将来認知症になった時の後見人を、あらかじめ自分で決めておく制度です。

③ 遺言書の作成:資産凍結そのものの対策ではないが、意思能力があるうちに行うべき相続対策の基本となります。

④ 生命保険:診断された際に、予め指定された家族が代理請求を行い保険金の給付を受けます。保険金の受取口座を代理人の口座にできる保険会社も増えています。

■まとめ

まだ元気で、物忘れがないうちに動き出すことが家族を守る唯一の手段と言えるでしょう。